タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
異常事態におののきながら、メチャクチャに手足を動かした。


それが功を奏したのか、偶然に頭がプカリと海面に浮く。


「・・・ブハッ! ハッハッ・・・!」


無我夢中で、とにかくバシャバシャ暴れる。


不意に背後に、水音と圧迫感を感じて振り向いた。


――ザアァァァッ!


サメが・・・! 目の前で巨大な口を開けて迫っている!


全身に、冷たい恐怖の衝撃が走った。


先端の鋭く尖った歯がズラリと並び、今まさに、あたしに齧りつこうとしている。


その凶器の威圧感と、不気味に黒い小さな目に圧倒され、あたしはただ唖然とするしかない。


食われる! もうだめだ! 


そう覚悟した時、颯爽とあたしとサメの間に、立ちふさがるようにトカゲブランが現れた。


サメの口の中を狙い、金色に輝く業火を素早く吹き付ける。


うわ! すごい炎・・・熱っ!


サメも驚いて身を反り返す。そして、あっという間に海中深くに逃げ去ってしまった。


た・・・・・・助かったー!


あたしは安心して、つい体から力が抜けそうになり、また慌ててバシャバシャする。


いや待て! 本質的な意味ではまだぜんぜん助かってないや!


「ブラン! あたし、泳げないの!」

「実はオレも泳げない!」


あ、そうか、タヌキだもんね。そりゃそうだ。


・・・・・・じゃなくて!


それでもなんとかして欲しい! 切実に!


「待ってろ! いま変化して・・・!」


――グイッ

水中の足首を、誰かに強くつかまれた感触がした。

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