タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
その直後にすごい力で引っ張られ、一瞬であたしの体は海中に沈みこむ。


再び、空気とは異質の、水の空間に閉じ込められる。


・・・誰なの!?


正体を確かめようと、海水の刺激の痛みに堪えつつ、なんとか目を開いた。


・・・ぞぉ、っと総毛立った。


セイレーンが、あたしの足首をつかんでいる!


セイレーンの長い濃緑色の髪が四方に広がって、まるで触手のように不気味にうごめいている。


魚類特有のギョロリとした目が、爛々と光ってこっちを見ていた。


あたしは口からゴポリと息を吐き、悲鳴を上げる。


必死に足を動かして振り切ろうとしても、水圧のせいで力を込められない。


身体はどんどん海中に引きずり込まれる!


息が・・・続かない!


必死に暴れるあたしの横を、何かがザッと通り過ぎた。


白いウロコと長いヒレがチラリと見える。・・・魚?


その生き物は、長い尾ビレでセイレーンの横っ面を殴りつけた。


衝撃でセイレーンの手が、あたしの足首から放れる。


その瞬間を逃さず、生き物はあたしの腕をつかんで海上に向かって泳いだ。


ザパァッと頭が浮いて、あたしは自分の隣に浮いているものを見て声を上げた。


「ブラン!」


ブランが、あたしと同じように海上に頭を出してゼイゼイ息をしている。


その姿は上半身は人間で、下半身は魚。


人魚に変化したんだ!

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