タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「ブランってすごい! 人魚にまで変化できちゃうの!?」


「一応、見よう見まねでな。なんせオレは山の生き物だから、感覚がよく分かんねえ」


顔をしかめてそう言うブランの泳ぎ方は、確かにどうもぎこちない。


それでもあたしを抱きかかえて、どうにか泳ぐことはできそうだ。


「このままマスコール王国まで行こう。船はもうダメだ」


「あ、でも待って! オルマさんやスエルツ王子を助けないと!」


「そうか。よし、じゃあお前をいったん、そこの岩場に・・・」


そこまで言ってブランが言葉を切った。


顔をヒクヒクと強張らせて、あたしの後方をジッと見ている。


あたしは一気に嫌な予感に襲われた。


・・・なんなのー? 今度はなによー?


もうこれ以上はカンベンしてよぉぉー!


そう思いつつ、恐る恐る、ゆっくり後ろを振り返る。


そしてあたしの顔もガキッと強張った。


うわ、出たーーー!!


セイレーン集団の逆襲ーーー!!


恐怖の魚類顔女、ご一行さまでご到着ー!!


魚の大群のような、セイレーンの群れがドオォッとこちらに向かってきた。


すごい数! こんなにいたの!?


いったい日頃はどこに隠れているのよ!? よく漁のアミにかからないもんね!


かかっても食べる気はしないけど!


その見るからに食欲を喪失させる大群が、めいめい、口を大きくカパリと開いた。


そして揃って、また歌を歌いだす。不思議な歌声の大合唱団だ。

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