タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「助かったのはボクたちだけかな?」


スエルツ王子が辛そうな顔でつぶやいた。


自分のせいで臣下を死なせてしまったと、罪の意識を感じているんだろう。


父親である王さまは当然のような顔をして、戦争で兵士や国民を大勢死なせているのに。


セルディオ王子は父親にソックリだけど、スエルツ王子って、本当にあのふたりとは正反対の性格なんだ。


「・・・王子のせいじゃないよ。だってまさかセイレーンが現れるなんて」


そんなこと誰も想像もできないよ。


魔物さえ現れなければ、無事に航海ができたはずなんだから。


「だからあんまり自分を責めないで」


「ありがとう・・・男爵夫人」


「そうだな。オレたちだけでも助かったのは奇跡的だ」


「わたくしめは、この太った丸い体が、なんと樽のようにプカプカ浮いたんでございますよ!」


「え? ほんと?」


「はい! 太っていてよろしゅうございました!」


オルマさんがそう言って、恰幅の良いお腹をポーンと叩く。


そのおどけた様子に、みんな少し笑った。


うん、元気だそう! 元気!


あたしたち、絶対に助かるよ! 大丈夫!


海岸から離れて、城を囲む森に足を踏み入れる。


高い木々が空の日差しをさえぎり、さらに薄暗い。


そうして着々と歩みを進めるうちに、あたしは妙なことに気が付いた。


「ねえ・・・なんかさ、あちこち焼けてない?」


森の木々の色々な場所が、黒く焼け焦げている。


まるで火事でもあったみたいに。


「戦禍で森も焼けたんだろ? 城のすぐそばなんだし」


「だって、戦争が終わってもう二十年近く経っているんでしょ?」

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