タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
体躯は、確かに馬だ。長いたてがみと、逞しくてしなやかな背中。


頭部も馬の顔。・・・・・・ただし、頭部のひとつだけ。


馬の頭の隣に、オオカミの頭がくっついて並んでいる。


鋭い牙をむき出しにして、低い威嚇の唸り声を上げながら。


オオカミの頭の隣には・・・ヘビの頭が。


細い舌をチロチロとのぞかせながら、こちらを見つめている。


そして四肢は馬のそれではなく、犬類の脚。


馬の背中から生えているのは尻尾ではなく、ウロコに覆われたヘビの体。


馬、オオカミ、ヘビ。


みっつの異なる生物の体が、完全に融合している。


そんな『モノ』があたしたち向かってジリジリと、近づいて来ていた。


・・・・・・・・・・・・。


全員、声もなく、瞬きもせず、その不気味な生き物を見ていた。


誰ひとりとして動こうともしない。


自分が何をすればいいのか、なにをすべきなのか、まったく考えることができない。


たぶんみんな、考えているのはあたしと同じこと。


おいおいおい。セイレーンの次は・・・


『キメラ』かよ。って。

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