タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
木々が密生してして、思ったようには進めなかった。


それでもあたしは息を切らして一生懸命に走り続ける。


城でブランと会うんだ。


そしてあたしもブランに謝るんだ。あのときの暴言を。


ちゃんと話したい。お互いの顔を見て、向き合って、話して、そして謝りたい。


そのために行かなきゃ。早く進まなきゃ・・・。


大きく波打つ胸を抱え、額の汗を手でぬぐって走り続ける足がギクリと止まる。


木々の間に、なにかがいた。


草木の間にうずくまるようにして、大きな灰色のかたまりがモゾモゾと動いている。


あたしはとっさに太い木の幹の陰に隠れた。


もう、嫌だぁ~。この急いでるときに今度はなんなのよ?


半泣きしながらそっと覗き見ると、どうやら鳥みたいだ。


ずいぶんと大きな鳥。うずくまった状態で、あたしの体の半分くらいの大きさだ。


・・・嫌な予感がモクモクと湧きあがり、心臓が不穏な鼓動を打つ。


確証はないけど、たぶん、いや絶対、この予感って的中する。


最近のあたしの予感的中率って、ご神託?ってぐらいすごいもん。


しかも悪い予感に限って高確率。神々しいくらいにパーフェクト。


鳥の頭が上下するたび、ガツガツと貪るような音がする。


食事中か・・・。しめた、そのスキにこっそり通り抜けられそう。


そっと片足を踏み出したとき、鳥の頭が上を向いた。


「・・・・・・・・・・・・!」


あたしは息を飲む。

顔が・・・人間だ! 人間の顔をしている!

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