タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
あたしは素早く立ち上がり、ひたすら木の枝で魔鳥の体を殴りつけた。


「きゃああ! きゃああー!」


夢中で悲鳴をあげながら、もう景気よく殴って、殴って、殴りまくる!


お願い! とっとと気を失うなり逃げるなりしてーー!!


「ギュアアァァッ!」


逃げるどころか魔鳥が怒って、歯をむいて噛みつこうとしてきた。


ギラギラした両目と血濡れた顔が、ググッッとあたしの目前に接近する。


その、この上ない醜怪な面相! むあっと鼻に突く異臭!


ひぃー! もうダメ! 我慢の限界点、突破!


「いやあぁぁぁーーーー!!」


自慢の右腕が反射的に動いた。死にもの狂いの剛力が拳に乗って炸裂する。


ドゴォッ! と魔鳥の顔面に、真っ正面からめり込む。


鳴き声もあげず魔鳥は地に倒れ、そのまま動かなくなった。


気・・・気を、失ったの? やっと?


・・・最初から、さっさとこうして殴っておきゃ良かったのかも。


あたしは震える足で数歩、後ずさった。

い、今のうちに、逃げ・・・・・・


――ギュアアー!


奇怪な鳴き声が響き、空から何羽も新たな魔鳥が飛んできた。


ギョッとするあたしを無視して、魔鳥たちは倒れた魔鳥に群がる。


貪り食う音。共食い、してる・・・。


ぞぉぉっと寒気がして、あたしは転がるようにその場から逃げ出した。

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