タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
ハァハァ荒い息を吐き、城に向かってひたすら移動する。


いつの間にか森を抜け、見晴らしの良い平原に出ていた。


つ、疲れた・・・。もう走れない・・・。


どんどん溜まる疲労のせいか、足の動きがおぼつかない。


頭も・・・フラつく気がする・・・。


息を切らして、城へと続く急な傾斜を延々とのぼり続ける。


振り返って見下ろすと、もう森からはだいぶ離れていた。


あの森が魔物のすみかなら、もう突然襲われる危険はないだろう。


見上げる空は茜色に染まり、すぐそこに建つ城の壁を照らしている。


崩れかけた城壁にかこまれ、黒く焼けた寂れた姿。


でも、かつては栄えていたであろうことを感じさせる、大きく立派な造り。


きっとブランはもう来ているよね? そう信じたい。みんなも着いているかな?


「男爵夫人! ご無事でようございました!」


振り向くとオルマさんが、こっちに向かって小走りに傾斜を駆けてくる姿が見えた。


「オルマさん! 無事で良かった!」


あたしは立ち止まって、オルマさんが追いつくのを待っていた。


すると傾斜のずっと下、森の方から何かが移動してくるのが見えて、あたしは目を凝らした。


あれは・・・?


・・・・・・キメラだ! キメラが森を抜けてこっちに向かってきている!


「オルマさん! 急いでーー!!」

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