タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
あたしの叫び声と表情に、オルマさんが立ち止まって後ろを振り向く。


キメラの姿を確認して飛び上り、再び大慌てで走り出した。


全身のお肉がタプタプと揺れている。


「早く! お城の中へ!」


ふたり揃って全速力で傾斜を駆けあがった。


でもこっちは二本足。あっちは四本足。


単純計算でも二倍の速さ!? すぐに追いつかれちゃう!


城門を潜り抜ける頃には、今にもキメラの足音が背後から聞こえてきそうだった。


ふたりでお尻に火がついたかのように突っ走る。


「あれが城の入り口です!」


走りながらオルマさんが指さす方向を見ると、すごく大きくて頑丈そうな扉があった。


その扉の前にスエルツ王子がボーっと立っている。


「スエルツ王子ーー!」


こちらを振り向いた王子に向かって絶叫した。


「扉を開けてーー! 早くーー!!」


血相変えたあたしたちの様子で状況を察したのか、王子が急いで扉を開けようとした。


でも扉は全然ビクともしない。


なにやってんのよ王子! ホントにひ弱なんだから!


「扉が・・・どうしても開かない!」


「押してだめなら、引きなさいよ!」


「押しても引いてもだめなんだよ!」


「いっそ上に持ち上げろーー!」


「無理ーーー!!」


「そこをどいてくださいませ! スエルツ王子さま!!」

< 211 / 438 >

この作品をシェア

pagetop