タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
オルマさんが叫びながらドスドス突進した。


よく肥えた全身で体当たりするように、扉に手をかける。


そして真っ赤な顔で押し始めた。


するとギギィっと軋んだ音を立てて、扉がゆっくりと開いていく。


ほら見なさいよ! やっぱり王子が軟弱なだけじゃん!


三人そろって扉の中に駆け込み、すかさず力を合わせて扉を閉める。


閉まっていく扉のすき間から、みるみるキメラの接近してくる姿が見えた。


うわあ! 来る! 来る! 早く閉めて早く!


――バッターン!


今にもキメラが飛び込んでくる瞬間、ギリギリで閉まった。


悔しげな咆哮が分厚い扉の向こうから聞こえてくる。


ま・・・ま・・・間に合ったー!!


あたしたちはヘナヘナと床に倒れ込んでしまった。


全員、ハァハァ肩で息をする。


「し、死ぬかと、思った・・・」


「み、皆さま、ご無事で、よろしゅう・・・」


「ブ、ブランは!? ブランを見なかった!?」


あたしの必死の問いかけに、ふたりは返事をしなかった。


顔を見合わせて申し訳なさそうに首を横に振る。


そんな・・・ブラン・・・!


あたしは立ち上がり、城内を見回しながら叫んだ。


「ブラン! いないの!? ブランーー!」


先に着いているかもしれない! 城内のどこかにいるかもしれない!

< 212 / 438 >

この作品をシェア

pagetop