タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
静まり返った城に、あたしの叫び声が響き渡る。


廃墟と化した城の奥へ向かって、あたしは何度もブランの名を呼んだ。


でも、返ってくるのは反響音だけ。


その反響音が、小さくなって震えていく。


「男爵夫人・・・泣かないで」


「ブランが・・・ブランが・・・約束、したのに・・・」


今まで我慢していたものが、一気にあふれてしまった。


両目からボロボロ涙がこぼれ落ちる。


すすり上げ、しゃくり上げ、それでもブランの名を呼び続けた。


あたしたちを守るために、おとりになったブラン。


さっきのキメラ、ひょっとしたらブランを追っていったヤツなのかも。


もしもそうなら、ブランは、まさか・・・。


「うっ・・・うっ・・・」


「男爵ならきっと大丈夫だよ。城の奥にいるのかもしれないよ?」


「さようでございますよ。きっと先に船を探していらっしゃるのでございますよ」


両手で顔を覆って泣きじゃくるあたしを、ふたりが慰めてくれた。


あたしは鼻をすすりながら何度もうなづく。


うん。そうだよね。ブランは大丈夫に決まってる。


だって伝説の白騎士なんだもん。すごく強いんだもん。


みつ頭の化け物なんか、目じゃないもん!


「あたし・・・ブランを探しに行く」


「うん。ボクも一緒に行くよ」


「わたくしめは、ここにおります。もし男爵さまが後からいらしたら、扉を開けて差し上げなければ」


あたしたちは三人揃って、うなづき合った。

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