タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
スエルツ王子と一緒に、とりあえず思った方向に進んで行く。


あちこち剥がれた壁に刻まれたレリーフや、落ちかけている額縁の中の絵が目につく。


それらはカメリア王国とは異なる文化を匂わせていた。


床も壁もホコリまみれで、そこら中に蜘蛛の巣がかかってる。


ビリビリに破けたカーテン。粉々になった陶器。


倒れた家具にこびりつくヒドイ汚れ。・・・あの赤黒い色は、まさか、人の血?


な、なんかそこら中、雰囲気バッチリだな。


幽霊が2~3匹立ってても違和感まったくなし。


違和感どころか、逆にそれがベストなコーディネート。


「だ、男爵夫人、暗いから足元に気を付けてね」


「うん。ねぇ、王子はマスコール王国のこと、知ってるの?」


「父上がこの国との戦争に勝ったときは、ボクまだ小さかったから。記憶にないんだ」


そうか・・・。

島国の小国だけど、かなり栄えた国みたい。


残骸になってしまったけど、ここの装飾品はそれぞれすごく手の込んだ物ばかり。


「戦争に負けたにしろ、なんで滅亡までしちゃったかな?」


「そうだね。どうやら、かなりの国力があったみたいだしね」


「それに・・・あの魔物たち」


この国に近づいた途端、現れた魔物たち。


伝説として語り継がれてはいても、まさか実在するなんて思いもしなかった。


魔物ってこの地域ばかりに集中して生息してるの? 

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