タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
頭皮に、わずかばかり残っている髪の毛のかたまり。


目玉はあるけど、腐ったように濁って溶け落ちてしまいそう。


紫色に変色したブヨブヨの皮膚。


肉が落ち、穴がむき出しになった鼻と、くすんだ色の歯。


あたしはビーンと全身硬直したままで、息も忘れて立ち尽くす。


そして、ふぅっと意識が遠のきかけた。


い、一部・・・いや大部分が白骨化した、腐乱死体・・・?


鎧をつけているところを見ると、城の兵士だったんだろうか?


あぁ、ご対面。頭のてっぺんから足先までマジマジと観察してしまった。


明日から悪夢にうなされそう・・・・。


鎧がカチャリと音をたてた。


見ると、骨ばかりになった手が、ゆっくりとあたしの目の前で動いていく。


え? ・・・・・・え??


骨の手が腰に差してある剣に伸び、スルスルと引き抜いていく。


錆びて変色した剣があらわになった。


あたしは呆けたまま、その様子をじーっと見学するばかり。


動いてる? この遺体、動いてる?


あら、じゃあ遺体じゃなくて、まだ生きてるんじゃないの。


そんな思考回路が完全にぶっ飛んでしまったあたしの頭上に、剣が高々と振り上げられた。


でも相変わらず、心が現実逃避し続ける。


身動きもできずに、まるで他人事のように剣が振り下ろされるのを眺めていた。


「男爵夫人ーーー!!」


――カシャーーンッ!!


スエルツ王子が血相変えて間に割り込み、自分の剣で錆びた剣を受け止めた。

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