タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
あたしはとっさに、足元に転がっているツボをゾンビに向かって思い切り蹴った。


ツボは狙いたがわず勢いよく飛んでいく。


よし当たれ! ほとんど骨ばかりなんだからバラバラに砕けてしまえ!


でもゾンビは持っていた剣で、難なくツボを床に叩き落としてしまう。


あぁ! 死体のクセしてなんて機敏なの!?


「だ、男爵夫人! どこかに隠れていて!」


プルプル震える剣を構え、裏返った声で王子が叫んだ。


隠れろっていわれても、隠れられるところなんかどこにもない。


い、いざとなったら、この自慢の黄金の右腕で片っぱしから粉砕してやる!


ジリジリと距離を詰めてくるゾンビたち。


腐り果てたノドから、地獄の呻きを吐き散らしながら・・・。


来る・・・・・・こっちに来る!


あたしと王子は背中合わせに寄り添い合った。


汗でジットリ湿る拳が小刻みにブルブルと震える。


怖い! やっぱり怖いよぉ! 


威勢の良いカラ元気がみるみる萎んでいく。全身が震えて、今にも腰が抜けそうだ。


ノドの奥から泣き声が漏れてしまうのを止められない。


ひょっとしたら、もう、ここで終わりなのかな・・・?


いや! 諦めない! 来るなら来い!


近づいたら、粉砕してやる! 粉砕・・・粉砕してやるうぅーーー!!


心の中で泣きながら絶叫した。

すると・・・


すぐそばの壁が、いきなり爆発した。


凄まじい音と粉塵をあげ、粉々に粉砕していく。

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