タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
お・・・終わっ・・・た・・・?

なにが、どうして、どうなった・・・?


床に突っ伏したまま、おずおずとあたしは目を開いた。


そして目の前の光景にポカンと口を開ける。


あたしや王子や、オジサンのいる足場は、なぜかまったくの無傷。


ここからゾンビたちのいた部分の床だけが、完全に破壊し尽くされていた。


乱雑に積み重なった大量のガレキの山。


すき間からゾンビの足や腕がのぞいて、ひくひくと蠢いていた。


このオジサン・・・ハンマーひと振りでゾンビ一掃しちゃった・・・。


ちっちゃいわりに、すご過ぎる。


「死んだわけじゃねぇよ。足止めしただけだぁ。もともとこいつら、死んでっから」


床に並んで倒れてるあたしと王子を見ながら、オジサンは笑って言った。


「まーだまだこいつら出てくっぞぉ。おめえら、逃げた方がいいぞぉ? じゃあな」


そう言ってクルリと背を向け、壁の穴へと向かって歩き出す。


あたしは唖然として、その小さな背中を見ていた。


そしてハッと気づいて慌てて声をかける。


「オ、オジサン待って! ブランを見なかった!?」


「はぁ? ぶぅらん?」


「はぐれた仲間なの! この城で落ち合う約束だったの!」


「おめえら以外の人間は、見てねえなぁ?」


「じ・・・じゃあ、じゃあタヌキは!?」

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