タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「男爵夫人、どうしたの?」

「んー? おいおめえ、ひょっとして・・・」


オジサンが近づいてきて、倒れているあたしの顔を覗き込んだ。


あぁ、オジサンの顔が、グルグルゆらゆら・・・。


「あー、やっぱりだなぁ。こりゃ魔鳥の毒にやられてるなぁ」


魔鳥の毒? あ・・・そっか。


森でハーピーに襲われた時、よけきれずに爪で肩を・・・。


「こりゃおめえ、もうすぐ死ぬなぁ」


オジサンのノンビリした声が、どこか遠くから聞こえる感覚がする。


耳が・・・音が、ハッキリと聞きとれない。


なんだか視界もボンヤリとかすんできたみたい。


王子の叫び声が、ぼわんぼわんと変に響いて聞こえてきた。


「し、死ぬってどういうこと!?」


「あの魔鳥の毒はなぁ、やっかいなんだなぁ。人間は、まず助からねえなぁ」


「そんな!!」


王子があたしの体をガクンガクン揺さぶった。


「男爵夫人! 死んじゃだめだよ!」


がくんがくんがくん。・・・毒に侵された体を盛大に揺すられてる。


思いっきり毒の回りが早まりそうなんだけど。


頭に霞がかかったように、意識をまったく正常に保てない。


でも、そんなに苦しくはなかった。


どこか・・・現実味が薄い。まるで夢をみているようで。


死ぬ・・・あたし、死ぬのか? ふうん・・・って。

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