タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「確かに政略結婚だよ。だからアザレア姫と初めて会ったときは、本当に嬉しかった」


「は・・・あ・・・?」


「だって政略結婚の相手が、まさかこんなに素晴らしい姫だなんてさ!」


王子はキラキラと輝く目で、あたしに熱く語り始めた。



ボクさ・・・


自分が出来の悪い王子だってこと、自分でちゃんと分かってた。


だってお勉強は苦手だし。剣術も馬術も苦手だし。


父上のように戦争も得意じゃないし、好きじゃない。


周りの人間が陰でバカにして悪口を言っているのも知ってた。


でも、なにも言い返せなかった。


言われてることはぜんぶ、事実だから・・・。


表向きはヘラヘラ笑ってたけど、みんなにバレないように、隠れてこっそり泣いていたんだ。


そんなボクを慰めてくれるのは、母上だけだった。


『あなたはいずれ、父上よりも偉大な王となるでしょう。母にはそれが分かりますよ』


ヒザにすがって泣くボクを、いつも慰めてくれた。


その言葉だけが、幼いボクを支えてくれていた。


母上は何度も何度も、温かく柔らかい手で頭を撫でてくれたよ。


ボクが泣き疲れて眠ってしまうまで。


いつまでもいつまでも、飽きることなく、いつまでも。


そう・・・・・・


母上の命の灯が、消えてしまうその日まで・・・。

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