タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
背筋を伸ばし、顔を上げ、姫はあくまでも主張し続ける。


自分の意思を。確固たる自分の存在を。


『命令されるがままの結婚など、お断りいたします!』


味方なんてひとりもいない。なのに、決して負けない。ひるまない。


たったひとり戦う勇ましくも気高い姫の姿は、ボクの目に輝いて見えた。



「本当にすごかったよ! 男爵夫人にも見せたいよ、あの勇姿!」


「はぁ」


「普段の可憐な様子からは想像もつかないだろうけどね!」


・・・いや、いい。簡単につくから。


あの姫なら、そりゃやるでしょ? それくらい。


スエルツ王子は、夢見るようにうっとりと語り続ける。


「姫なら、きっと情けないボクを変えてくれる! ボクの伴侶は、姫でなければ意味がない!」


はあ。

『姫でなければ意味がない』って、そういう意味だったのか。


「いつかきっと父上は姫の偉大さに気付き、姫を国に連れ帰ったボクの偉業を、認めてくれるはずなんだ!」


はあ。

『役に立つ』とか『ボクがせっかく・・・』って、そういう意味だったのか。


「ボクのアザレア姫は、なんといっても世界一の女性なんだから!」

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