タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
王子は目をパチパチさせて、あたしを見た。


「王子は優しくて、人の心の痛みを知っている。それに強いし勇敢だよ」


失われた命を悼む誠実な心。


傷付いた者を労わる優しい心。


ゾンビに襲われたあたしを守ってくれた勇敢な心。


熱い想いを届けようとする、強い心。


それが王子の真実だ。


「王子のお母さんは、本当の王子をちゃんと分かっていたんだ」


「男爵夫人・・・」


「スエルツ王子は、偉大な王さまになるってあたしも思うよ」


王子の両目が、わずかに潤んで赤くなる。


それをごまかすように何度か瞬きして、王子は少しだけ目を逸らした。


でも軽く鼻をすすって、すぐに笑顔をこっちに向ける。


「ありがとう男爵夫人!」

いつも通りのホンワカとした、気の抜けた笑顔。


うん、それだよ王子。王子はそうでなきゃ!


あたしたちは、顔を見合わせてお互いに笑い合った。


がんばろう! 一緒に!


「おまえたち! ノンキに笑ってる場合じゃねぇぞー!」


突然オジサンが叫びながら、転がるようにこっちに向かって駆けてくる。


見れば周囲がやたらと騒々しい。


ノームたち全員が、血相変えて駆けずり回っている。


「な、なに!? なにかあったの!?」


「やべーぞ! 地竜が来るぞ! 早く隠れろ!」


「は? 地竜? なにそれ・・・?」


――ズウゥゥーーーーーン!!


巨大地震のような振動に、洞窟全体が大きく揺れ動いた。

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