タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「ブラン頼むから目を開けて! 頼むから! お願いだから! 頼むからー!」


「おい、ねえちゃん! 頼むから竜の顔の真ん前で叫ぶなって! 目ぇ覚ましちまうだろがよぉ!」


目を覚ます・・・?


あたしはブランを抱きしめながら、竜の様子をうかがった。


山のような竜の全身が、ゆっくりと上下しているのが見えた。


そしてぶおぉっと、突風のような風が規則正しく何度も吹く。


「これ、竜の寝息なの?」

「力を吸い取られて、眠っちまったんだぁ。しばらくは起きねぇだろうよぉ」


近くで見ると、本当に巨大生物。


顔なんだか何なんだかもう、これじゃ全然分からない。


それでもあたしは怖気づいて、ジリジリと後ずさった。


「しばらくは起きないって、じゃあいつかは起きちゃうの!?」


「当然だぁ。すーぐに回復しちまうよぉ」


「どうすんのよ! またヒス起こされたら手に負えないよ!」


「しーっ。でけえ声出すなって」


オジサンに注意され、あたしはウッと声を飲みこむ。


そこへスエルツ王子とオルマさんがアタフタと駆けつけてきて、ブランを覗き込んだ。


「男爵夫人! 男爵・・・だよね、これ! 大丈夫かい!?」


「ご無事でございますか!? 男爵さま!」


「しー! しー! みんなうるさいよ静かにして!」


「ねえちゃんがさっきから一番うるせえぞぉ。白タヌキなら大丈夫だぁ」


船旅の間、ブランはずっと人間の姿のままだった。


地竜を攻撃するのは、自身を攻撃するようなものだと言ってたし。


弱っていた体で無理をし過ぎたんだ。

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