タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
自分の気持ちで手一杯だし。話せば長くなるし。


ちゃんと誤解のないように説明できるか自信がない。

でも・・・。


「できれば、ブランのことは内緒にしていて欲しいの」


「・・・・・・・・・・・・」


「勝手なこと言うようだけど、お願いスエルツ王子」


「彼・・・彼は間違いなく、ボクの知ってる男爵なの?」


「うん。本物の貴族じゃないけど、ブランであることは間違いないよ」


「そっか・・・じゃあ、いいよ」


あたしは涙の溜まった目で、王子を見た。


「彼が彼なら・・・それでいいよ。内緒にした方がいいなら、そうするよ」


「王子、それでいいの?」


王子のこと、あたしたち騙してたのに。


それに対して、なんにも説明してないのに。


「うん、いいよ。だって・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


「だって、友だちだもん」


そう言って王子は笑った。


いつも通りの、へらぁっとした柔らかい笑顔で。


あたしは・・・もう我慢できずに大声で泣いてしまった。


「う・・・うえ、えぇぇー・・・」


貴族であっても、そうでなくても。


人間であっても、そうでなくても。


彼が彼なら・・・・・・それでいい。


いいんだ・・・。

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