タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「それで・・・竜神王の目は?」


スエルツ王子が竜を気にしながら小声でオジサンに問いかける。


「この洞窟に保管してあるだぁよ」


「なんだって地上にあった秘宝が、こんな所にあるんだい?」


「ちょっと前に、上から人間たちと一緒に落っこちて来ただぁよ」


「落っこちて来た? どうして?」


「おら知らねえよ。そん時ゃ、ずいぶんと地上は騒がしかったなぁ」


オジサンとスエルツ王子が、頭を寄せ合いヒソヒソ声で話し合っている。


地上が騒がしかった? 戦争の頃かな?


「それからだぁ。眠ってた地竜が暴れ出したのは」


「じゃあ今のうちに、皆で協力して、さり気なーく秘宝を竜の目の中に突っ込んじゃおうよ」


「それが一番いいだろなぁ」


「ですがスエルツ王子さま、男爵夫人、わたくしたちは今すぐカメリア王国へ戻りませんと」


オルマさんがそう切り出す。


「こちらからの連絡が途絶えて、城では大騒ぎでございましょう。救助隊が来るかもしれません」


「え!? それはマズイよ!」


スエルツ王子が慌てた。


救助隊が来たら、ここの魔物たちに襲われてしまう。全滅するのは目に見えている。


「おめえら、もう地上へ帰りな」


オジサンが言った。


「その白タヌキも、死んじゃいねえがずいぶん弱っちまってる。故郷の土が一番回復に効くんだ」


あたしたちはグッタリとしているブランを見つめた。


そしてオジサンの言葉にうなづいた。

< 272 / 438 >

この作品をシェア

pagetop