タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
緩やかなのぼり坂を歩いていくと、どんどん光は大きくなる。


「・・・着いた」


外へ出るとそこは、タヌキ山のふもとのあたりだった。


本当にタヌキ山に通じていたんだ。このトンネル。


それにしてもこんなに大きなトンネルなのに、誰も今までその存在に気が付かないなんて。


不思議に思って振り向くと・・・


「あれ? トンネルは?」


たったいま、あたしたちが出て来たトンネルの穴が無い。


みんなでキョロキョロ探したけど、やっぱりそれらしきものはどこにも見当たらなかった。


・・・・・・本当に不思議。


「とにかく、ボクは大急ぎで城に戻るよ」


王子がグッタリしながらも、落ち着かない様子でそう言った。


オルマさんもすっかり疲れ果てたのか、やたら顔色が悪い。


「あたしは、この山でブランを休ませるから」


「そうだね、それがいいよ」


王子が心配そうに、あたしの腕の中のブランを見た。


とにかく、あたしたちはお互いにとっての最優先のことをしないと。


秘宝の件は、スエルツ王子やオルマさんから、皆にきちんとした説明がされるだろうし。


「男爵夫人、落ち着いたら城へ来てね」


「うん。その時にちゃんと全部、説明するから」


「待ってるよ。きっと来てね」

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