タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
王子とオルマさんを見送り、あたしはブランを抱きなおす。


ブランはずっと目を閉じたまま、目覚める様子もない。


体は温かいし、呼吸は規則的だし、苦しんでいる様子もないけれど・・・。


どうしても心配だ。一刻も早く、おタヌキ王の所へ連れて行かないと!


むせるような緑の香りに包まれながら、急ぎ足で山の中を進んでいく。


この山全体に漂う空気が、どこか懐かしく感じられた。


最初にタヌキ山に入り込んだときは、右も左もまるで分からなかったけど。


今はなんとなく進むべき道が判断できる。


そんな自分をあたしは嬉しく、そしてとても誇りに感じた。


――ピクン・・・


その時、腕の中のブランがわずかに身じろぎした。


ブラン!? もう目が覚めたの!? すごい! おタヌキ山効果バツグン!


「ブラン! ブラン!」

「におい、が・・・」

「え?」


におい? なんの?

あ、やだ! ひょっとしてコウモリのフンが付いちゃったかな!?


んもう、どこ? 頭の上にべっちょり?


「とにかく、これでもう安心・・・」

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