タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
喜んでそう言いかけたあたしは、途中で言葉を止めた。


ブランの眼つきが、どんどん厳しくなっていくのが見えたから。


「・・・ブラン?」


「人間のにおいだ」


「人間のにおい?」


「大量の人間のにおいがする。それに、これは・・・・」


ブランの体が、腕の中でビクッと硬直した。


「ミアン、オレを下ろせ! 変化する!」


「え? でもまだ回復が・・・」


「いいから下ろせ! タヌキの血のにおいが充満しているんだ!」


「ええ!?」


「早く!!」


あたしは慌ててブランを地面においた。


タヌキの血のにおいが充満してるって、どういうこと!?


まさかみんなの身になにかが!?


ボンッという破裂音と共に、ブランが人間の姿に変化した。


「行くぞミアン!」

すごい力であたしの手を引っ張りながら、山道を猛然と走り出す。


何が・・・いったい何が起こっているの!?


あぁ、どうかお願い! みんな無事でいて・・・!!


ザッと、ブランの足が止まった。


前方に何十人もの兵士たちが、何か小山のような物の前にガヤガヤとたむろしている。


・・・なんだろ? あそこの物は。

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