タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
訳も分からず、あたしはただ悲鳴を上げ続ける。


あの黄金色をした美しい毛並み。あれはみんな、仲間のタヌキたちだ!


隣でポカンと呆けていたブランの顔が、見る間にワナワナと歪んでいき・・・


その口から、大絶叫が放たれた。


「やめろおぉぉぉーーーーー!!」


ブランが凄まじい表情で兵士たちに向かって駆け出す。


あたしも悲鳴を上げながら夢中で走り出した。


「やめて! やめてえぇぇーーー!」

「おや、これはシーロッタ・ヌゥーキー男爵夫妻」


場違いな冷静な声がした。


聞き覚えのある声に、思わずあたしたちの足が止まる。


そして、その声の主である人物の名を叫んだ。


「セルディオ王子!」


長身の金髪。整った顔立ち。神職の衣装。


間違いなくそれは、第二王子のセルディオだった。


「戻って来たか。兄上はいかがされた?」


タヌキの死体の山を前にして、平然とそう問いかけてくる。


その顔に向かってあたしは声を振り絞った。


「あんたがこれを!? なんでこんなことをするの!?」


「聞いているのはこちらだ」


「やめて! 今すぐこんなことやめてぇ!」


「答えろ。兄上はいかがされた?」

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