タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
こっちの激情など、どこ吹く風のその様子にあたしは頭が破裂しそうになる。


唇を震わせ、大声で吐き出した。


「スエルツ王子なら無事よ! ついさっきオルマさんと一緒に城へ向かったから!」


「秘宝は? 竜神王の目は手に入れたのか?」


「秘宝は手に入らなかったけど、その件はもういいのよ!」


あんたの大事なお兄さんは無事だし!


王子と姫は誤解を解いて、きっとすぐにも婚儀は行われるはず!


王子は、王さまに認められてちゃんと王位を継ぐから!


この国は安泰よ! あんたの心配しているような諍いは起きない!


これであんたは満足なんでしょ!?


「なんと、兄上は無事に帰って来たのか。てっきり魔物にやられるだろうと思っていたが」


「・・・・・・え?」


「愚鈍な兄だが、どうやら悪運だけは強いらしいな」


さも忌々しそうな顔で、セルディオ王子はそう吐き捨てた。


その顔はどうみても、大事な兄が無事に帰って来て喜んでいるようには見えない。


て、いうか・・・。

『魔物にやられる』って、あんた今、確かに言ったよね?


・・・なんで知ってるの?


マスコール王国が魔物に占拠されている状況を、なんであんたが知っているの?


あたしたちだって、現地に行くまで知らなかった事実なのに。

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