タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「豪華な衣装も招待状も、山の金を使って用意したのだろう? この女のお蔭で、ただの噂に確証がもてた」


「・・・・・・・・・・・・」


「金脈を放っておく手はない。全て国のものだ」


セルディオ王子は淡々と言葉を続ける。


「作業しやすいように、山は完全に切り開く。その前に、得られる利益は得ておかねば」


「利益・・・?」


「タヌキだ」


当然のように、王子は言った。


「山が開けば、どうせタヌキは全滅だ。生きているうちに一匹残らず殺して売り捌けば、莫大な利益になる」


そのあまりの言葉に、あたしはクラリと目まいがした。


信じ・・・られない。


本当に信じられない。


セルディオ王子への嫌悪感から、今にも吐きそう・・・。


それが人間の当然の理屈?


それが、こんな非道なことが許される理由になるの?


金脈があるからと、山を破壊して。


利益になるからと、タヌキたちを皆殺しにして。


貴重だからと、竜の目玉をくり抜いて。


そして奪われ、破壊され、追い詰められたものたちの悲鳴に対して、人間はこう言うんだ。


『だって欲しかったんだもの』


と・・・・・・。

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