タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
(あ・・・あ・・・)

王子とブランの顔を交互に見るあたしの心臓は、破裂しそうに動悸を打つ。


指先まで冷えているのに、体中から汗が噴き出した。


「ミアンの願いはタヌキの保護だろう? タヌキのために、ミアンは今まで必死になって・・・」


「タヌキの保護? なんだそれは?」


やめて。その先を言わないで。


ブラン、お願いだからその先を聞かないで・・・・・・。


「タヌキのことなど、ひと言も聞いていない。その女の望みは、自分の命乞いだけだよ」


(ああぁ・・・・・・!)


それを聞いたブランの表情が、一変した。


ただでさえ青ざめていた顔が、みるみる真っ白になる。


あたしはブランの目を見た瞬間、絶望を悟った。


終わった・・・・・・。


もうだめだ。全部終わった。


グラグラと激しい目まいがする。


あたしの体から血の気が一滴残らず引いていく。


なんて・・・こと・・・。


よりによって、今、こんな時に・・・。


なんて・・・・・・報い・・・・・・。


・・・消滅してしまいたい。


今すぐここから、ブランの前から消滅してしまいたい!


嵐のように混乱する中で、あたしは痛いほど感じていた。


まるで異質な『化け物』を見るような・・・・・・


あたしを見つめる、ブランの重い視線を。

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