タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
その言葉を、ブランは言えずにいる。

なぜなら。


口に出してしまえばもう、後戻りはできないことを知っているから。


その答えを、あたしの口から聞いてしまうことが怖いから。


その先にあるものは・・・


終焉だけだと、知っているから・・・。


あたしの心は高波に翻弄される小舟のように激しく揺れ動く。


なんて答えればいい?


言い訳したところで、なにを言っても取りつくろえはしない。


でも、失いたくない。


あたしはブランを失いたくない!!


『セルディオ王子が言っていたことは、全部嘘よ。お願いブラン、あたしを信じて』


そう言えばブランは信じてくれるだろうか?


そしてあたしたちは、このままずっと一緒にいられる?


タヌキの仲間として、このままずっと・・・。


「・・・・・・」


あたしの唇がわずかに動いた。

でも。


少しばかりの息を吐き出しただけで、声にはならなかった。


言えない。そんなことは言えない。だって。


あたしが裏切っていたのは、まぎれもない事実なのだから。


それを一番知っているのは、あたし自身なのだから。

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