タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
もう嘘はつけない。これ以上、ブランに嘘をつきたくない。


自分と彼を騙したところで、あたしの望むものは手に入りはしないんだ。


決して。


「・・・・・・・・・・・・」


あたしは勇気を振り絞り、ただ、うなづいた。

それが精いっぱいだった。


「そうか・・・」


たったひと言、ブランはそう言った。


そしてまた、周囲には恐ろしい静寂が訪れる。


ブランは、あたしを責めなかった。


ひと言もしゃべらずにあたしをじっと見つめている。


悲しそうな、苦しそうな・・・・・・


そして、憐れむような目で。


あたしのことを愚かなヤツだと憐れんでいるのだろうか。


それとも、あたしを信じた自分自身を憐れんでいるのだろうか。


あたしの両目がぼやけて滲み、涙が頬を伝って落ちた。


悲しくて、寂しくて、苦しくて苦しくてたまらなかった。


ブランと再び巡り合えたら、今度こそ全部、本当のことを言おうと決意していた。


いまこうして、思いもよらず真実が明るみになって。


あたしは、その報いを受けている。


ブラン、ごめんなさい。


ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい・・・・・・。




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