タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
――ガサガサ・・・


草むらで音がした。


ヒョイッと小さな頭が、繁みの中から現れる。


「白騎士、ミアン、戻っていたのか!」


数匹のタヌキが次々と繁みから飛び出してきた。


ブランが驚いて目を丸くする。


「お前たち、無事だったのか!」


「ああ、いくらかは逃れられた。全滅はかろうじて免れたんだ」


あたしとブランは慌てて駆け寄った。


草むらの中で数匹のタヌキが、怯えたように身を縮こませている。


良かった! 生き残りがいたんだ! あぁ、本当に良かった!!


「おタヌキ王さまは!? ご無事なのか!?」


「それが・・王は・・・」


「どうしたんだ!? まさか!?」


「いや。山が襲われた時、王さまは、ここにはいらっしゃらなかったんだ」


いなかった? 

あたしは怪訝に思った。


おタヌキ王が山を不在にするなんて、そんなことあるんだろうか。


「実は王さまは、山のふもとの屋敷に単独で行かれたのだ」


・・・バカだんなの屋敷に!?


そんな! なんだってそんな危険なことを!?


捕まったら命はないのが分かっているのに、どうして!?


「ミアンの、奴隷の契約書を盗みに行くと言っておられた」


あたしの奴隷の契約書を!?

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