タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
階段に向かう途中で、たくさんの人間の遺体を見た。


潰れ、砕け、血に塗れた惨たらしい遺体が無造作に転がっている。


あたしは目を背けながら、とにかく前に向かって進んだ。


「男爵、夫人・・・・・・」


「スエルツ王子!? 」


スエルツ王子の声だ! どこ!?


王子がガレキにもたれかかるようにして、グッタリと座り込んでいる。


急いで駆け寄り、王子の顔を覗き込んだ。


「大丈夫!? しっかりして!」


頭から血を流し、薄っすらと目を開けて王子はあたしに言った。


「オルマが、秘宝を盗んだって?」


「そうらしいの! 地竜はもう、めちゃくちゃ怒ってる!」


「男爵は・・・?」


「それが・・・セルディオ王子が大規模なタヌキ狩りをしたせいで、仲間と一緒に逃げたの」


「セルディオが・・・? なにそれ、ボク聞いてないよ・・・」


頭に手を当て、スエルツ王子は首を横に振る。


自分の手についた血を見て驚いたらしく、おかげで少し意識がハッキリしたみたい。


「あたし、オルマさんを探しに行く。王子はここで休んでて」


「ボクも行くよ! アザレア姫を探しに行かなきゃ!」


飛び跳ねるように立ち上がった王子は、ガレキを踏み越えながら階段の方へ向かった。


あたしもその後に続く。


姫、大丈夫かな? オルマさんと一緒なんだろうか。


ひとりでいたら不安だけれど、オルマさんと一緒だとしたらもっと不安だ。

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