タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
歪んで傾いた階段を駆け上る。


建物そのものは何とか無事でも、中は散々な惨状だった。


内部を飾る贅沢品がことごとく破壊され、価値の無いゴミになってしまっていた。



――ズゥン・・・ズゥゥン・・・


もう何階分を駆け上ったろう。かなり上の階までのぼったはずだ。


繰り返す振動は、地竜だろうか? それともオジサンのハンマー?


急がないとオジサンの身が危な・・・・・・・。


――ズウゥゥ・・・ン!!


ひときわ巨大な揺れを、ひと揺れ感じた。


ワンテンポ遅れてグラァリと身体が大きく揺れる。

うおわ、こ、転ぶ・・・!


「わあっ!?」


悲鳴と同時に王子の体がバランスを崩して倒れた。


もたれた手すりが体重を押さえきれずバキッと壊れ、王子の体が階下に落ちかける。


「王子ーーー!!」


王子の腕と背中の服の生地をとっさに掴んだ。


ドンッと一気に人間ひとり分の体重が、あたしの腕にぶら下がる。


ぐうぅ!? お、重いーー!!


あたしの体がドサリと階段に倒れ、肋骨を打って痛みに顔が歪んだ。


・・・・・・お、重くて、握力が追いつかない!


手がすべる! 王子の上着が脱げる! 王子が落ちちゃう!


「男爵夫人! 手を放して! キミまで落ちたらどうするの!?」


「どうもしない! 落ちるつもりも、落とすつもりも無い!」

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