タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
あたしはギリギリ歯を食いしばり、強く強く王子の腕を握りしめる。


指が食い込むほど握ってもズルズルと手は滑った。しかも手に汗が吹き出る。


ぶら下がる王子の必死の顔と、下までの距離を見比べてゾッとした。


王子の体重のせいであたしの体のバランスが崩れ、下半身が浮く。


そのまま引っくり返って落ちてしまいそう。


・・・・・・こっから落ちたら、確実に死ぬ!


腕の筋が引っ張られて痛い! すごくすごく痛い!


でも負けるなーー!! あたしの黄金の右腕ーー!!


「キミを道連れにしたくない! 手を放してー!! 男爵夫人ー!!」


「嫌だーーーーー!!」


目に薄っすらと涙を浮かべる王子に思い切り怒鳴り返した。


バカ! なに勝手に自己完結してんのさ!


だって王子はアザレア姫に気持ちを伝えるんでしょ!?


あたしは絶対に・・・ぜぇったいに見捨てないからねー!!


「手を放さないでー! 男爵夫人ー!」


・・・・・・・・・・・・!?


この声は!


「いま行きますわあぁぁぁ!!」


姫っ!!

姫が叫びながらドレスの裾を抱え上げ、すごい形相で突っ走って来た!!

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