タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「スエルツ王子、おしっかりなさって!」


叫ぶやいなや、姫は片手で王子の片腕をむんずとつかんだ。


お蔭であたしの腕の負担はずいぶん軽くなる。


すぐさま姫は、もう片方の手を王子の背中辺りに向けてグッと伸ばした。


「・・・だめ! 姫!」


襟をつかんでもダメなんだ! 服が脱げてしまうんだよ!


ぬぅっと伸びた姫の手が、ガシィ!っと力強くつかむ。

王子の・・・


後頭部の、柔らかそうな茶色い髪の毛を!


・・・・・・ひ、姫!? 狙いはそこ!?


「はああぁぁーーー!!」


気合い一発、姫が思い切り王子の腕と髪の毛を引っ張り上げる。


あたしもつられて、満身の力で引っ張り上げた。


うおおりゃあぁぁーーー!! 頼むぞ黄金の右腕ーーー!!


王子の体はズルズル持ち上げられ、無事に階段の上に戻った。


三人三様、ぐったりしながらゼイゼイ肩で息をする。


よ・・・良かった! 王子がカツラじゃなくて本当に良かった!


姫が普通の姫じゃなくて、本当に良かったー!


「ス、スエルツ王子、大丈夫・・・」


――ガバッ!!


王子が起き上がり、すごい勢いで姫を抱きしめた。

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