タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「内乱を気にしていたのは父王だ。勝手に私を神職に就けて、私から継承権を奪ったのだ」


「そんな・・・・・」


「おそらく、私が国王の座を狙っているのを、薄々感じていたのだろう」


第二王子を神職に就けて、継承権を奪う。


そして王家特有の、美談の噂を流す。


争いは起きないし、国民は美談を信じて王家に信頼を寄せる。


「私は、王家の求心力のためのお飾りだったのだよ」


「セ・・・・・・」


「まぁ、甘んじてお飾りを務めたがね。その方がいろいろ都合も良かったし」


「セル・・・ディオ・・・?」


スエルツ王子は、なにも知らなかったんだろう。


すべて蚊帳の外。愚鈍な第一王子に、政治のことなど分かりはしない。


ただ、お前は弟を信じていればいいとばかりに・・・。


「嘘だよね? だってお前は、いつもボクの味方をしてくれて・・・」


「ええ、いつもイライラさせられました。兄上の愚鈍さの後始末は本当に大変でしたので」


「・・・・・・・・・・・・」


「今回、魔物に食い殺されてくだされば、一番手っ取り早くて簡単だったのですが」


はぁっ、とこれ見よがしに溜め息をつくセルディオ王子。


スエルツ王子はポカンを口を開いたままだ。


弟の顔を、見知らぬ誰かを見るような目でみつめている。

< 345 / 438 >

この作品をシェア

pagetop