タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「で、でもあんたは、あたしに秘宝を探し出してスエルツ王子へ渡せって言ったよね!?」


『なんとしても秘宝を探し出して兄上に』


確かにこいつはそう言った。


それは・・・兄の為じゃないの? 


兄の事を思いやっての言葉じゃなかったの?


父親には出来の悪い息子の烙印を押され、疎まれ。


いつも味方をしてくれた優しい弟に、面と向かって『死ねばいいのに』とまで言われ。


それじゃ・・・スエルツ王子があんまり可哀そうだ!


「兄上が魔物に殺されずに生き延びた時は、秘宝の力で王位に就くためさ」


「・・・・・・・・・・・・!」


「どんな願いでも叶う秘宝。いずれは私の物にするつもりだったからな」


「バ・・・バカじゃないの!? あんた!?」


めいっぱい『バカ』の部分に力を込めて、セルディオに向かって吐き捨てる。


そーだよ! 全ての意味において、あんたは明確に『バカ』だ!


どんな願いでも叶う秘宝?


・・・はっ。なにそれ本気で言ってる?


ノームのオジサンが言ってた。そんな都合のいいものが、あるわけないって。


そんな当然の理屈、子どもにだって分かりそうなもんなのに。


欲にかられて、何も見えなくなってしまっているんだ。


そんなに国王の座が欲しいか!? そんなに秘宝を手に入れたいか!?


「そんなモンばかり欲しがるから、バカになるのよ人間は!」


「お前はなにも知らないのだな」


「知ってる! だから言ってるの!」


「秘宝は本当に人の願いを叶えるのさ。事実・・・父上は秘宝の力でマスコールを滅ぼした」

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