タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
姫の声を聞いているのかいないのか。無表情なオルマさんからは、なにも伺えない。


とにかく早く王さまの手当てをしないと。


血の広がりが止まらない。このままじゃ手遅れになる!


ジリジリと焦りながら、あたし達はオルマさんの唇が、真実を語るのを待った。


「王よ・・・・・・」


ポツリと、唇から言葉かひとつ、こぼれた。


「王よ、わたくしを覚えておいでか・・・?」

「・・・・・・・・・・・・」


大きく胸を上下させながら、王さまがわずかに顔を上げた。


そして黙ってオルマさんのことを睨み上げる。


まだ獅子のような強さを失わないその目には、疑問の色が見えた。


「無理もない。あれから、もはや20年。それにわたくしも、それとは分からぬように姿を変えた」


「・・・・・・・・・・・・」


「わたくしも老いたが、あなたも老いたな」


少しだけ腰をかがめ、オルマさんは王さまに顔を近づける。


「分からぬか? ほんのわずかな面影も、その記憶から消し去ったか?」


オルマさんは・・・顔を歪めて笑っていた。


「あの頃、あなたが永遠の愛を誓った・・・マスコールの姫の面影を」

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