タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
秘宝は、城の地下に保管されていた。


国王だけが入室する事を許されている、厳重に警備された「秘宝の間」に。


たとえ姫の身分でも入室は許されない。


自分が手に入れられる全ての財産を使って、関係する衛兵や侍女を買収し、密かにもぐり込んだ。


暗い室内を照らすのは自分が持ち込んだ明かりだけ。


その乏しい光でも、わたくしを驚かせるのは十分だった。


床一面、壁一面に不思議な文様が彫り込まれている。


さらに驚くことに、その文様自体が光りを帯びて輝いていた。


マスコールの一族は、初代の頃から呪術の知識や研究に長けていたと聞くけれど・・・。


これはいったい、何の目的の呪術なのだろうか?


そして何より一番、わたくしを驚かせたもの。


室内の中央の大理石の台座にの上に置かれているもの。

これが・・・・・・


王家の秘宝、竜神王の目。


初めて見る秘宝の姿に、しばしの間我を忘れて見入ってしまった。


どんなにか大きな宝玉かと思っていた。


けれどそれは、手の平にスッポリと隠れてしまうほどに小さい。


でも球形のそれは・・・生きていた。


わたくしの目の前で、確かに生きて、眩い輝きを放っていた。

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