タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
恥も外聞もなくわぁわぁ泣き喚き、懇願した。


死の恐怖に顔は醜く歪む。


そんなわたくしを見つめていた愛する者は、無言で近づいて来た。


そして、ゆっくりと手を差し出す。


あぁ! やはり助けてくれるのだ!

やはり愛は本当・・・・・・!


スッと伸びた手が、床の上の秘宝を拾った。


そして無情にも愛する者は背を向ける。


わたくしの歓喜は絶望に変わった。


『・・・待って! お待ちください!』


『待ってなどいられぬ。何が起こっているのかは分からぬが、急がねば私は生き埋めだ』


『どうかお助け下さい!』


叫ぶ声など聞こえぬように、愛する者は恍惚と独り言をつぶやいた。



おぉ・・・この秘宝を手に入れる為に、どれだけ苦労したことか。


これがあれば我が国は戦争に勝てる。


その功労さえあれば、並み居る兄たち全員を押しのけ、私が王位につける。


カメリアの玉座は、ついに・・・ついに私の物だ。



信じられない言葉が、次々と愛する者の口から聞こえてくる。


『そんな・・・あなたは確かにわたくしを愛していると・・・』


『愛? ・・・・・・ふっ』


蔑むように、鼻で笑う。


『よくもまあ素直に信じたものだよ。実に愚かな女だ。お蔭で助かったがな』

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