タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
『・・・・・・・・・・・・』


『よく働いてくれたな。その点は礼を言う。ではな』


『待って! お願いですからお助けを!』


無我夢中だった。


裏切りも、城の崩壊も、秘宝を奪われたことも。


それらは全て、確かにわたくしが愚かな行為のせいだろう。


ただ、ただそれでも・・・


『どうか命ばかりは・・・あなたの子どもの命だけは、お助け下さいませ!』


狂ったように泣き叫んだ。


『どうか、人としての情がおありならば・・・子の命だけは、お助けを!』


『わたしの子? ・・・ふん』


頬を歪ませ、吐き捨てられた。


『敵国の穢れた血が、我がカメリアの王家に混じるなど虫唾が走る。そんな命を助けると思うか? バカ女が』


・・・・・・・・・・・・。

全てが・・・・・・

断ち切れた。


その時


ひときわ恐ろしいほどの大揺れが襲った。


ヨロめいた男の手から、スルリと秘宝が滑り大穴へと落ちていく。


男は世にも哀れな悲鳴を上げた。


わたしの腕の力は、そこで尽きた。


ふぅっと身体が落下していく。奈落の底へ。


そして、最後に見たものは・・・・・・



愛していると心から信じていた、見知らぬ男の醜く歪んだ顔だった・・・・・・。


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