タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「ただ一番目に生まれたというだけの、この不出来な人間の下に一生控えていろと!」


そして手の中のペンダントを、スエルツ王子に向かって投げつけた。


ペンダントはガツッと音を立てて、スエルツ王子の額に当たり跳ね返る。


「セルディオ王子! なんと無礼なことを!」


アザレア姫が気丈に叫び、スエルツ王子の額に心配そうに手を当てた。


スエルツ王子は黙ってうつむいたままだ。


セルディオはそんな兄の様子など気にも留めずに、父親を鋭い目で見ている。


「だから私はオルマの誘いに乗ったのですよ! 愚かな父と愚かな兄から、国を救うために!」


「ええ、わたくしにはこの男の本性が、すぐに分かりましたから」


激昂していくセルディオに反して、オルマさんはあくまでも静かだった。


「この男は、昔のあなたに良く似ている。我欲にまみれて己を見失う、下種な人間」


「だまれ!」


「・・・・・・ねえ」


ポツリと、セルディオ王子が小さな声を出した。


「じゃあ父上は・・・・・・知っていたの?」


うつむき、下を向いたままで。


「マスコール王国が魔物に満ちた危険な場所だと、知っていたの?」


あ・・・・・・。


あたしは手で口を覆った。マスコール王国で王子と交わした会話が蘇る。

つまりそれは・・・・・・


「知っていて・・・ボクを、マスコールへ送ったの?」

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