タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
あの時スエルツ王子は、父親が知っているはずないって言ってた。


知ってたら、息子の自分を送り出すはずがないって。


そう信じてた。・・・ううん。

信じようと、していた。


でもセルディオが、薄ら笑いながら断言する。


「そうですよ兄上。父上はもちろんご存じだったのです」



父上はね、さすがに兄上の愚鈍さに嫌気がさしていたのですよ。


そこで賭けに出たのです。


もしも息子に生きて帰れるだけの裁量があれば、そのまま国王に据えようと。


だが、死ねばそれまで。


その場合は私に跡を継がせるつもりだったようです。


兄上が生き延びようが


殺されようが


父上にとっては、たいした違いなどなかったようですよ。



「だから申し上げたでしょう? 兄上が魔物に殺されてくだされば、一番簡単で良かったのに、と」


高笑いしながらセルディオは言った。


残酷な言葉を、さも楽しげに。


スエルツ王子は・・・・・・


その場に崩れ、頭を抱えてすすり泣いた・・・・・・。

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