タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
アザレア姫がスエルツ王子を抱きしめるようにして、一緒に涙をハラハラと流す。


「さぁオルマよ、秘宝をこちらへ渡してもらおうか」


セルディオがオルマさんに向かい、手を伸ばした。


「私はお前の復讐心など、最初から見抜いていたよ。それを利用させてもらった」


セルディオはニヤリと笑う。


「カメリアを滅ぼされるわけにはいかん。ここは私の国だからな」


「わたくしが、あなたの言いなりになるとでも?」


「素直には聞くまいな。だが、これならどうだ?」


セルディオは素早くアザレア姫の腕をつかみ、引っ張り上げた。


あっと声を上げる間もなく腰の短剣を抜き、姫のノド元にグッと突き付ける。


あたしは息を飲み、スエルツ王子が顔色を変えた。


「・・・・・・アザレア姫!」


「オルマ、姫の命と交換だ。秘宝をよこせ」


「セルディオやめてくれ! アザレア姫を放してよ!」


スエルツ王子が懇願する。


「もう・・・もうこんなのは嫌だ! こんなの、やめてくれ!」


隠されていた家族の本心。耐えがたい言葉。偽りの姿。


堕ちていく現実に、王子の心は悲鳴を上げている。

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