タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
でもセルディオは耳を貸さない。


アザレア姫の白いノドに、これ見よがしに切っ先を押し付ける。


「さあオルマ、お前の大事な姫がどうなってもいいのか?」


「ちょっとあんた! どこまで腐った人間なのよ!?」


ゾンビって、死んだ人間がなるもんだと思っていたけど!


人間って生きたままでも腐るもんなのね!


「腐乱死体レベルの腐り具合よ! あんたら親子は!」


「愚かな父や兄と同等に扱われるのは心外だな」


「あんたらとスエルツ王子を一緒にするな! あんたなんか国王になれるもんか!」


「だが、私が王になるのさ。秘宝の力でな」


「秘宝にそんな力なんか、無いっての!」


まだそんな事を言ってるの!?


ふん! やっぱりバカだ! こいつの頭は腐って傷んでる!


「秘宝には、人の欲望を剥き出しにして引き寄せる力があるのだよ」


「人間の欲望?」


「欲望の集合を操り、支配する者が王だ。それだけの力が私にはある」


「・・・・・・違う!」


あたしは叫んだ。


「王は・・・王とは、『守る者』なんだ!」


セルディオは小ばかにしたようにあたしを見た。


「オルマよ、お前の心情も察しよう。だから父上の命はくれてやる」


くれてやるって・・・・・・


それは別にお前のもんじゃないだろうが!

< 366 / 438 >

この作品をシェア

pagetop