タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
ゴクリとツバを飲み込み、さらに拳に力を込めた。


諦めたりしない! 絶対に!


スエルツ王子とアザレア姫は、あたしの仲間だ!


このふたりを守れるのはあたしだけ!


だから絶対に守る! 


あたしは一歩前に進んだ。


ふたりのそばから少しでも離れなきゃ。危険に巻き込めない。


ゾンビたちがそれを合図のように、呻き声を上げて、あたしに向かってきた。


あたしは真っ白な心で、ゾンビに向かって走り出す。


なにも考えていなかった。


ただ無心に、守ることだけを思っていた。


目の前の、腐敗した兵士たち。


あたしの命を奪おうとしているものたち。


・・・・・・むざむざと受け入れはしない。


あたしは、命の輪の中で戦う女だ!


「うあああぁぁぁーーー!!」


声を上げ腕を振り上げ、コブシで殴りつける。


グシャリと、信じられないくらい気色の悪い感触が手に纏わりついた。


ゾンビがドサッと一匹倒れる。


どうだ見たか! これがあたしの黄金の右腕だ!


とっさにコブシを戻し、次を狙おうとして・・・・・・


その、時間が無かった。

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