タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「なんでそんなこと・・・!」


「一族よりも何よりもミアンが大切だから。オレはミアンを選んだ」


「・・・・・・・・・・・・!」


「こんなオレも一族失格だ。だから出てきたんだ」


「ど、どうするのよ! そんなことしたら、ブランには何も残らないじゃないの!」


「そんなことはない。オレにはミアンがいる」


ブランは微笑み、自分の胸に手を当てた。


「ここにあるんだ。オレの知ってる、オレの中の確かなミアンが。ミアンへの・・・強い想いが」


黒い果実のように輝く瞳が、あたしを見つめて語り掛ける。


真っ直ぐに。痛いほど真っ直ぐに。


ブランの中に・・・・・・

ブランの真実が・・・・・・?


「好きなんだ。愛してる。だから守る。もう、オレにはなんの理屈も必要ないんだよ」


・・・・・・・・・・・・。


ドッと涙があふれた。


ギュウッと目と胸が痛んで、息が苦しい。


すごい勢いで鼻をすすり上げ、懸命に呼吸を繰り返し、瞬きを繰り返す。


・・・・・・あぁ・・・・・・


たくさんの場面が、大切な思い出が、心の中を駆け巡る。


仕掛けアミ越しの初めての出会い。


山の夜で感じた温もり。


毎日ふたりで寄り添い見つめた山の夕日。


悲しかった城の舞踏会。


命がけの戦い。


大切な者たちの死。失った物。得た物。

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