タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
ブランが見たこともないほど美しい表情で笑った。


そしてあたしをギュッと力いっぱい抱きしめる。


あたしも泣きながら精一杯抱きしめ返した。


感情が高ぶり過ぎて、胸ばかりか全身が痛い。


こんなに痛いのに、幸福感で頭の芯が痺れて気が遠くなりそう。


潮が満ちるように、喜びが全身を満たしていく。


何度でも言いたい。伝えたい。

ブラン。好きよ。あなたを愛している・・・・・・。


「・・・・・・来るぞぉ!」


ノームのオジサンが叫んだ。


その声の鋭さにあたしはハッとする。


ブランが一転して表情を引き締め、後ろを振り返った。


来るって、ゾンビの軍団!? それとも魔獣たちが来るの!?


・・・来んな! 人がせっかく人生初の幸せに浸っているって時に、邪魔しないでよ!


「ブラン! 魔物がここに襲ってくるの!?」


「・・・・・・違う。おいスエルツ、しっかりしろ」


ブランは、泣き腫らしてガックリと放心したままの王子に声を掛けた。


「ここが正念場だぞ。男だろ? 死ぬ気で根性見せろ」


「・・・・・・・・・・・・」


「なりふり構うな。お前が一番愛するものを、しっかり守れよ」


打ちひしがれていた王子が、ゆっくりとアザレア姫を見つめる。


目に涙をたたえた姫が見つめ返した。


ふたりは、強く抱きしめ合った。

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