タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
ねぇまさか、それ・・・・・・わざと壊そうとかって考えていないよね?


そんな恐ろしいこと、まさか・・・・・・。


オルマさんは微笑をたたえて、王さまを見ていた。


片手で剣を王のノド元に突き付け、片手で秘宝を高々と掲げて。


あたしはゴクリとツバを飲む。


緊張と焦りで、額にジリジリと汗が浮き出て来た。


オルマさんのどちらの手も、わずかでも動くことが怖い。動いたら・・・・・・


もう取り返しがつかない・・・・・・。


あたしたちは誰ひとり身動きできないまま、かたずを飲んでオルマさんを見守った。


「王よ、目の前で息子を失った気分はいかがですか?」


「・・・・・・・・・・・・」


「わたくしの苦痛を、少しはご理解いただけたでしょうか?」


王さまは大量に汗をかいていた。


顔色も青ざめ、目の下が薄黒くなってきている。


出血が多すぎるんだ。


「でも、まだ足りません。わたくしの味わった苦痛にはまだほど遠い」


声はあくまでも優しく、やわらかな微笑みを崩さず。


彼女は王に向かって恐ろしい言葉をささやき続ける。


その対比が、寒気を覚えるほどゾッとする。


「あなたは、目の前でさらに失わねばならない。・・・全てを」


玉を握った彼女の腕が、ゆるやかに動き出す。


今にも床に叩き付けようとするように。


「自分のせいで世界の全てが滅び去る苦痛を・・・まざまざと思い知るがいい!」


オルマさんの目に狂気が宿った。

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